経営事項審査の際に資本性借入金を負債から引いて自己資本とみなせるようになりました

はじめに

2025年(令和7年)7月1日から、経営状況分析申請および経営事項審査申請における資本性借入金の事務取扱いが変わりました。負債の中に資本性借入金が含まれている場合、Y点(経営状況評点)等が上がる可能性が出てきます。今回は、「資本性借入金」について説明したうえで、事務取扱いの変更について解説してみます。

いつものように東京都・神奈川県の中小建設業者を想定して……といいたいところですが、対象となる建設業者は、かなり限定的になるのではないかと考えています。

詳しくは、国土交通省のウェブサイトをご参照ください。
資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて(令和7年7月1日)

資本性借入金とは

まずはイメージをつかめるように、資本性借入金の概要を説明してみます。詳しく知りたい方は、中小機構のウェブサイトなどをご参照ください。

ビジネスQ&A「資本性劣後ローンについて教えてください。」(中小機構 J-Net21)

資本性借入金のイメージ

「資本性ローン」や「資本性劣後ローン」と呼ばれることもありますが、いずれも「資本性」という用語が入っています。

「負債だけれど自己資本(純資産)として計算するもの」という感じでしょうか。貸借対照表を単純化して考えると、次のような流れになります。

1.資産より負債が多く債務超過になっている
2.負債の中に資本性借入金が含まれている
3.資本性借入金を純資産とみなして計算すると資産超過になる

イメージしやすくするために債務超過の例で説明してみましたが、債務超過でなくても、負債の一部を純資産に振り替えて計算することができれば、自己資本比率(自己資本/総資本)などは向上します。

企業にとっては好都合なのですが、当然、すべての借入金を「資本性」とみなすことはできません。むしろ、かなり限定的なものだと考えてください。

国土交通省の定める要件

国土交通省の通知によると、資本性借入金として取り扱うためには、次に掲げる要件のすべてを満たす必要があります。

(1)償還期間が5年超
(2)期限一括償還
(3)配当可能利益に応じた金利設定
(4)法的破綻時の劣後性の確保
(5)貸出主が金融機関(政府系含む)であること又は別紙記載の制度による借入であること

【通知】〈令和7年国不建第41号〉資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて(PDF)

代表的な資本性借入金

上記(5)「別紙」の一番上に出てくるように、資本性借入金の代表としては、日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」が挙げられるでしょう。

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)(日本政策金融公庫)

「ご利用いただける方」は、次のように説明されています。

次の(1)から(7)までのいずれかの融資制度の対象となる方
(1)新規開業・スタートアップ支援資金
(2)新事業活動促進資金
(3)企業再建資金
(4)企業活力強化資金
(5)海外展開・事業再編資金
(6)事業承継・集約・活性化支援資金
(7)ソーシャルビジネス支援資金

(1)のスタートアップ支援や、(3)のように中小企業活性化協議会等が入って企業再生をする場面などで活用されるもの(DDS)が主流であり、通常の資金調達ではなかなか出てこない話だと思われます。

ただし、東日本大震災やコロナ禍の際などにも特別制度がありましたので、当時、制度を活用した方がいらっしゃるかもしれません。

経営事項審査への影響

前述のとおり、負債が自己資本になるわけですから、経営事項審査の場面においても負債と自己資本に関する評点に影響が出てきます。具体的には、次の4つの指標が改善される可能性があります。

  1. x2:負債回転期間(負債合計/月商)
  2. x5:自己資本対固定資産比率(自己資本/固定資産)
  3. x6:自己資本比率(自己資本/総資本)
  4. X2:自己資本

経営事項審査における具体的な手続き

最後に、具体的な進め方を確認しておきましょう。

事前準備(証明書の作成)

まずは、「『資本性借入金』該当証明書」を用意します。国土交通省のウェブサイトから様式をダウンロードして作成してください。

なお、証明できる者として、「公認会計士・税理士・建設業経理士1級」が挙げられています。W点の「建設業の経理が適正に行われたことの確認」ができる者と同じ資格ですが、この証明書は社外の資格者でも作成できるようです。

経営状況分析申請

経営状況分析申請書の余白に「資本性借入金のうち自己資本と認められる金額」を記載したうえで、証明書と(金融機関との)契約書を添付して、登録経営状況分析機関に申請します。

国土交通省の説明を読む限り、経営状況分析の際には、通常どおりの(資本性借入金も負債に入れた)建設業財務諸表を作成することになるようです。当然、決算変更届の際も同じ扱いでしょう。

経営事項審査申請

経営事項審査(経審)の際には、経営規模等評価申請書の自己資本額の欄に「資本性借入金のうち自己資本と認められる金額を加算した自己資本額」を記載して申請します。このときにも、裏付け資料として「『資本性借入金』該当証明書」を提出してください。

おわりに

今回は、資本性借入金に係る経営事項審査の事務取扱いについて解説しました。

前述のとおり、特殊な事情がなければ登場しない借り方ですので、過去に借り入れた実績があったとしたら、契約の際に金融機関等から詳細な説明を受けているでしょう。また、通常であれば、認定支援機関等からの支援を受けながら詳細な事業計画書を作成しているはずです。つまり、「気づかないうちに資本性借入金を借りていた」という状況は、ほぼないと考えてください。

「10年後に一括返済」ですとか、「そんな感じの借り方をしたな」という心当たりのある方がいたら、顧問の税理士さんなどに確認してもらうとよいのではないでしょうか。もちろん、資本性ローンを組んだ記憶がある方は、新制度を積極的に活用してください。

また、今回の変更を受けて、今後は中小建設業者の間でも資本性借入金の活用が広がるかもしれません。もっとも、通常の返済に比べると貸し手(金融機関)にとっては不利な条件となる傾向がありますので、極端にハードルが下がることはないでしょう。

そのようなわけで、今回は「対象者が限定される記事」になってしまいましたが、参考にしていただけると幸いです。