中小企業の経営者なら最低限は知っておきたい最低賃金に関するルール

はじめに

先月あたりから、最低賃金に関する報道を目にする機会が増えているのではないでしょうか。じつをいうと、夏に最低賃金の話題が多くなるのは今年に限ったことではなく、毎年恒例となっています。

先にお話ししておくと、東京都では2025年10月から、時給1,226円が最低ラインになる予定です。

今回の記事では、「なんとなく知っているけれど詳しくは知らない」人が多いのではないかと思われる「最低賃金」について解説していきます。

いつものように、中小企業の経営者や人事労務担当者を想定して記事を書いています。

最低賃金とは

労働基準法では、最低賃金について次のように定められています。

第28条(最低賃金)
1 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。

元々は労働基準法で定められていたのですが、昭和34年に最低賃金法として独立したそうです。ということで、最低賃金法の定めを確認してみましょう。

最低賃金法 第4条(最低賃金の効力)
1 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

第1項は、文言どおりです。最低賃金を下回ってはいけないと。ここは直感的に理解できるのではないでしょうか。そして第2項では、「(仮に労働者が合意して)最低賃金を下回る条件にした場合でも、最低賃金で契約したことになる」という内容が定められています。

最低賃金の計算方法

時給の計算

最低賃金法の第3条に「時間によって定める」とありますので、時給で計算することになります。時給の人はわかりやすいでしょう。これに対して日給の場合は、日給を1日の労働時間で割って計算します。例えば、日給12,000円で8時間労働の人であれば、時給は1,500円になるわけです。

月給の場合は、計算がより複雑になります。「月給を月の平均所定労働時間で割る」という説明になりますが、「月の平均所定労働時間」を出すのが難しいと感じる方もいるでしょう。一般的なやり方としては、年間の所定労働日数に1日の所定労働時間を掛けて年間の所定労働時間を計算して、それを12で割って月平均を出します。

年間240日・1日8時間勤務であれば、年間1,920時間です。月の所定労働時間は12分の1の160時間ですから、月給16万円の人が時給1,000円になる計算です。もっとも、東京都の最低賃金は10月から時給1,226円になりますので、この場合は月給196,160円以上の支給が必要になります。

ちなみに、1日8時間労働の場合、東京都の最低賃金で計算すると、年間245日労働(年間休日120日)で月給200,247円になります。ですから、「月給20万円」というのは、ぎりぎりのラインになるのではないでしょうか。

なお、最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」だけでなく、産業別に定められる「特定最低賃金」というものもありますが、今回は地域別最低賃金に絞って解説をしていきます。ちなみに、東京都と神奈川県においては、地域別最低賃金を上回る産業(特定最低賃金)はありません。

最低賃金に含めないもの

  • 精皆勤手当・通勤手当・家族手当
  • 割増賃金(法定時間外・法定休日・深夜)
  • 賞与(ボーナス)等
  • 臨時に支払われる賃金

最低賃金の計算をするときには、上に掲げる通勤手当や割増賃金、ボーナスなどは含めないで計算します。「固定残業代」の設定をしている場合など、注意が必要です。

最低賃金の決定方法

最低賃金法に「最低賃金審議会」の定めがあり、この審議会が最低賃金を決めています。

審議会は「労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数をもって組織する」とされています。労働者としては賃金を上げてもらいたいところですが、使用者は人件費を抑えたいでしょうから、どちらか一方の主張だけで決めていくわけにはいかないのですね。

細かい話をすると、中央最低賃金審議会で話し合って全国的に目安を決めて、その目安を基に地方最低賃金審議会が審議をして、都道府県労働局長に対して建議することになっています。ようするに、全国の目安を先に決めて、それを基準に都道府県ごとの最低賃金額を決めていくイメージです。

この審議会が毎年夏に開かれるので、7月から8月にかけて最低賃金に関する報道が増えるわけですね。

過去10年における最低賃金額の推移

過去10年の最低賃金額について、全国平均と東京都の推移を見てみます。なお、今年はまだ決定していない県もあるので全国平均は中央最低賃金審議会が決定した額にしていますが、実際には「上乗せ」する県(と北海道)の影響でもう少し上がる見込みです。

着実に上がっていることが見て取れます。コロナ禍が始まった2020年は、中央最低賃金審議会は「据え置き」としましたが、1円から3円まで上げた県があったため、全国平均は1円アップとなりました。

その後の上昇は、ご存じのとおりかと思われます。

今後の見込み

現政権になったときに、「最低賃金の全国加重平均を2020年代のうちに1,500円まで引き上げる」という話が出ました。「来年以降も一定のペースで引き上げて」「2029年10月に1,500円」と仮定すると、次のような数値が出てきます。2025年の1,118円が2029年に1,500円になるのであれば、年間7.63%ずつ上昇していくことになります。そこで、東京都については、2025年の1,226円が7.63%ずつ上昇していく予測としました。

都市部と地方との賃金格差解消も考えられているようですので、実際には東京都の上昇率が抑えられるかもしれません(その分、地方の上昇率がきつくなるわけですが)。あくまでも目安となりますが、参考にしてみてください。

おわりに

今回は最低賃金の解説でした。短期的には、10月からの改定によって「最低賃金割れ」が起こらないように気をつけてください。中長期的には、今後の最低賃金上昇にも耐えられるだけの原資の獲得、ひと言でいうと「生産性の向上」を目指していただくことになるのでしょう。

単純に稼働時間を増やして売上を増やしたとしても、人件費が増えるので利益は残らないでしょう。むしろ人件費の圧迫によって利益率が下がってしまうかもしれません。競合他社との差別化を実現して単価を上げたり、設備投資によってコストを下げたりと、「言うは易く行うは難し」の改革が中小企業にも求められているのではないでしょうか。

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