代表的な中小企業向け退職金制度の特徴と向いている会社 | 中小企業の退職金制度について考える
はじめに
中小企業の退職金制度について考えるシリーズの第5回です。最終回となる今回は、これまで紹介した各制度の特徴をまとめたうえで、それぞれの制度がどのような企業に向いているのか検討してみます。絶対的な正解というわけではありませんが、退職金制度を導入する際の参考にしていただけると幸いです。
各制度の比較
まずは、これまで3回に分けて解説してきた中小企業向けの代表的な退職金制度について、比較表にまとめてみました。比較した項目は、「月額の掛金」「役員加入の可否」「パート従業員加入の可否」「制度の導入および維持にかかる費用」「制度の導入および維持にかかる事務負担」「投資性」の6点です。
どのような企業に向いているのか
次に、それぞれの制度がどのような企業に向いているのか検討してみます。
中退共(特退共)
中退共は、中小企業の退職金制度の王道といってよいでしょう。大企業向けの退職金のように大きな額を用意するのは難しいものの、導入・維持費用がかからず事務負担も軽い点が特徴です。また、公的な制度であるため、経営者も従業員も安心して加入できるのではないでしょうか。
なるべく手間をかけずに、それなりの退職金制度を用意したい企業であれば、まずは中退共から検討してみるのがよいと思われます。
自社制度
制度設計の自由度が高い反面、設計によっては導入や維持に手間がかかる可能性もあります。また、資金を自社で管理する必要もあります。
中退共をベースとしつつ、不足している部分があると感じるのであれば、それを補うものとして自社制度を導入するのも選択肢の一つではないでしょうか。
企業型DC
中小企業でも導入が進んではいるものの、維持費用や事務負担もそれなりにかかるため、やはりある程度の規模の企業でないと採用は難しいかもしれません。ただし、「役員の退職金」として考えるのであればメリットは大きいため、そこを重視する企業(というより経営者)にとっては、有力な候補になりそうです。
なお、従業員への制度説明や投資教育も必要になりますので、そのあたりもクリアできる企業でないと、導入は難しいといえるでしょう。
退職金制度なし
このシリーズの第1回でも述べたとおり、「退職金制度を設けない」という選択肢もあると思います。その場合であってもiDeCoに加入して老後の資産形成を図ろうとする従業員がいる場合は、必要な協力をしてあげてください。
【参照】確定拠出年金法 第78条(個人型年金についての事業主の協力等)
厚生年金適用事業所の事業主は、当該厚生年金適用事業所に使用される者が個人型年金加入者である場合には、当該個人型年金加入者に対し、必要な協力をするとともに、法令及び個人型年金規約が遵守されるよう指導等に努めなければならない。
おわりに
全5回にわたって中小企業の退職金制度について考えてきました。退職金制度の導入や改訂を検討している中小企業のみなさまの参考になれば幸いです。
当社では、企業にとって最適な退職金制度の設計を一緒に考えるお手伝いもさせていただいております。退職金制度について悩んでいる方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームからご連絡ください。