下請の一人親方等に対する安全衛生対策が義務化されました

2023年(令和5年)4月1日の労働安全衛生法令改正により、危険有害な作業を行う事業者に対して、下請の一人親方等への保護措置が義務付けられました。

【参考】一人親方等の安全衛生対策について(厚生労働省WEBサイト)

対象となる事業者

労働安全衛生法第22条に関して定められている11の省令において、労働者の健康障害を防止するために保護措置の実施が義務付けられている作業を行う事業者です。具体的には、粉じんの舞う環境や有機溶剤等を使用する環境が対象となっているため、建設業者や製造業者が想定されています。

【参考】労働安全衛生法 第22条

事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 原材料、ガス、蒸気、粉じん、酸素欠乏空気、病原体等による健康障害
二 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
三 計器監視、精密工作等の作業による健康障害
四 排気、排液又は残さい物による健康障害

【参考】11省令

・労働安全衛生規則
・有機溶剤中毒予防規則
・鉛中毒予防規則
・四アルキル鉛中毒予防規則
・特定化学物質障害予防規則
・高気圧作業安全衛生規則
・電離放射線障害防止規則
・酸素欠乏症等防止規則
・粉じん障害防止規則
・石綿障害予防規則
・東日本大震災により生じた放射線物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則

新たに保護措置の対象となる相手

次のいずれかに該当する人が対象となります。

(1)作業の一部を請け負わせる下請業者(一人親方を含む)
(2)同じ場所で作業を行う労働者以外の人(警備員等を含む)

改正前においても、労働安全衛生法令により、自社で使用する労働者に対しては保護措置が義務付けられていました。しかし、労働安全衛生法は労働者を保護するための法律であることから、一人親方を含めた下請業者は対象となっていませんでした。

今回の改正によって、自社で使用する労働者以外の人たちも、保護措置の対象となったのです。

義務付けられた措置の主な内容

(1)作業を請け負わせる一人親方等に対する措置

一定の危険有害な作業の一部を請け負わせる場合、請負人(一人親方、下請業者)に対して次の措置の実施が義務付けられます。

・請負人だけが作業を行うときにも、事業者が設置した局所排気装置等の設備を稼働させる(または請負人に設備の使用を許可する)等の配慮を行うこと
・特定の作業方法で行うことが義務付けられている作業については、請負人に対してもその作業方法を周知すること
・労働者に保護具を使用させる義務がある作業については、請負人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること

(2)同じ作業場所にいる労働者以外の人に対する措置

危険性・有害性のある作業場所にいる一人親方や他社の労働者、資材搬入業者、警備員などに対して、次の措置の実施が義務付けられます。この対象は、請負契約を結んだ相手(下請業者)に限りません。

・ 労働者に保護具を使用させる義務がある作業場所については、その場所にいる労働者以外の人に対しても保護具を使用する必要がある旨を周知すること
・労働者を立入禁止や喫煙・飲食禁止にする場所について、その場所にいる労働者以外の人も立入禁止や喫煙・飲食禁止とすること
・作業に関する事故等が発生し労働者を退避させる必要があるときは、同じ作業場所にいる労働者以外の人も退避させること
・化学物質の有害性等を労働者が見やすいように掲示する義務がある作業場所について、その場所にいる労働者以外の人も見やすい箇所に掲示すること

その他

重層下請構造の場合は、請負契約の相手方、つまり直下の下請事業者に対してのみ、措置義務が生じます。二次下請に対する措置義務は一次下請が負い、三次下請に対する措置義務は二次下請が負う、ということです。

作業の一部ではなく全部を請け負わせる場合は、元請事業者は単なる注文者の立場になるため、措置義務の対象とはなりません。

元方事業者(元請事業者)は、今回の改正で義務付けられた措置を関係請負人が行っていない場合には、必要な指示を行わなければなりません。

局所排気装置の使用等は配慮義務ですが、何らかの手段で、労働者と同等の保護が図られるよう便宜を図る等の義務が事業者に課されます。

周知に関しては、次のいずれかの方法が求められています。
・常時作業場所の見やすい場所に掲示または備えつける
・書面を交付する(請負契約時に書面で示すことも含む)
・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録した上で、各作業場所にこの記録の内容を常時確認できる機器を設置する
・口頭で伝える(周知内容が複雑でない場合に限る)

おわりに

新たに保護対象となった請負人や関係者においても、内容を理解して今回の措置を実施することが重要です。具体的には、局所排気装置等の適切な使用や決められた作業手順の順守、そして防じんマスク・防毒マスクといった保護具の適切な着用、さらには立入禁止や喫煙・飲食禁止の指示に従うことなどが求められます。

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